私は強制力のある徴兵制には反対だ。徴兵制への歯止めは重要な問
題であるにもかかわらず、自民党の改憲案では個別法を制定すれば
導入可能な条文となっている。現憲法でも導入可能という人もいる
ようだが、それなら憲法を改正して歯止めをかけるべきだ。ただ、
私がいくら叫んでも、私だけの力では何もできない。憲法と安全保
障の問題について私の立場を明らかにするので、皆さんが意見を考
える上で参考にして頂きたい。
憲法改正、特に9条改正には様々な意見がある。9条の理念は私も素
晴らしいと思うが、シリアやチェチェンやチベット等の情勢を見て
も明らかな通り、現実の世界は9条の理念が実現するほど成熟して
いない。日本に関して言えば、自衛隊や米軍の存在で平和が保たれ
ている現実を直視すべきである。
この現実に即した方向に対応するため、9条を改正すべきという人
がたくさんいるが、9条改正にはメリットとデメリットがある。一
つのメリットを挙げれば、9条を改正して集団的自衛権を認めれば、
お世話になっているアメリカの本土が攻撃された際に、加勢してあ
げられることなどがある。私の立場としては、日本のことだけを考
えれば現憲法のままでも運用可能ではないかと思うが、時代の流れ
としては、9条改正の方向に向かっているという認識でいる。
いずれにしても、9条を改正すれば、日本の軍事力がオーソライズ
され、戦争がしやすくなるという側面は否定できないだろう。理不
尽な侵略に対応しやすくなる半面、避けられたかも知れない戦争で
犠牲になる人が出る可能性がある。特に戦争になった場合、危険度
の高い前線で誰が戦うかという問題がある。志願兵が戦う場合、経
済的理由から仕方なく志願して戦っている人もいるのは問題だが、
各人がどの程度救国の理想に燃えて職務を行っているかの線引きは
難しい。嫌々ながら兵士になった人と尊敬すべき義士との線引きが
困難なのである。それに対し強制的な徴兵では、未来ある若い命が、
本人の意思とは無関係に断たれる可能性がある点で、問題があるこ
とが明確である。
現代の軍事では高性能の武器を使って作戦を展開するため、寄せ集
めで士気の低い強制的な徴収兵は役に立たず、強制的な徴兵制は無
意味と聞く。もし将来、強制的な徴兵が実施されるとすれば、高度
な武器を失い、無益な肉弾戦に頼らざるを得なくなった時ではない
か?先の大戦では、敗色濃厚となってから、「神風はきっと吹く」
などという非論理的な励ましのもと、特攻隊で多くの若者の命が、
戦局の大勢に影響を与えずに失われた。戦争には何としても勝たね
ばならない。しかし、勝てる見込みがなくなったら、無益な肉弾戦
を続けるべきではない。先の大戦でも、もっと早く無条件降伏して
いたら、東京や沖縄での死者も減っただろうし、広島や長崎の町も
守られ、北方領土、もしかしたら樺太も守られていただろう。意味
のない強制的な徴兵制は放棄し、志願兵が集まらなくなったら、潔
く負けを認めるべきだ。
私には一人娘がいる。女性自衛官もいる時代なので、徴兵制が実現
されれば、女性が徴兵される可能性もある。将来、負け戦の責任を
取りたくない戦争遂行者の保身のために、負け戦が続行され、娘が
徴兵されて命を落とす可能性を、考えただけでも、心の底から怒り
が湧く。ただ、冷静に考えても、現時点では、そんなシナリオは起
こり得ないと、誰も保障することなどできない状況なのである。こ
の状況に歯止めをかけるため、9条が改正されるにせよされないに
せよ、憲法の18条(生存権)に「強制的な徴兵制は行わない。」と
いう一文を明確に加えて頂きたい。
政治家やマスメディアの方々には、生きとし生ける人間としての幸
せとは何かを深く考えて頂き、日本国民を不幸の底に落とす、強制
力のある徴兵制の余地が残らないように活動して頂けるよう、切に
希望する。
☆以下追記:
憲法が個別法だけで徴兵制を敷けるようになっていることにできる
だけ多くの人に気付いて頂いて、9条を変えたい人が自分達から、
「18条を変えれば徴兵制の心配はないから、9条を変えさせてくれ」
と言いだすようになることを願っております。9条を変えたい人の
中には、徴兵制の野望のない人もいますが、ひそかに狙っている人
もいます。両方を相手にするのは大変なので、徴兵制に野望のない
人を味方につけたいのです。賛同者が増えるよう祈っております。
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